「世代間交流国際フォーラム」へむけてのご挨拶

日本世代間交流協会会長  草野 篤子(信州大学教授) 


> 現代日本社会の際立った特徴の一つとして、他のどの国よりも急速に人口の少子・高齢化が進んでいることがあげられる。特に2007年からは、第2次世界大戦直後のベイビー・ブーム期(1947−1949年)に生まれた約700万人、その前後を入れると約1千100万人にものぼるいわゆる団塊の世代が企業で定年を迎え、家庭や地域に戻ってくることになる。年金、医療、介護システムの破綻といったネガティブな見方ではなく、高齢者が地域で活発に社会活動に参加し、子ども、青年、中年と交流し、人と人との関係を構築することは、主婦や女性・子どもだけの地域社会から脱却することに貢献し、また現代社会が抱えている諸問題を解決する足がかりをつくる可能性を、大きく孕んでいる。
 2004年5月に、日本世代間交流協会は福祉・介護・教育などの学際的なメンバーが集まって創立された。次世代育成、高齢化する人々の役割を位置づけるコミュニティーの再構築、現代社会が抱える様々な課題を解決するアプローチとして異世代間交流プログラムを研究、普及することを目指している。また、国際世代間交流協会とも連携をはかっている。
  国連の1999年の国際高齢者年においては、高齢化が個人の問題にとどまらず、地域、社会、企業、経済、国家、地球規模にまたがる問題を含んでいるがゆえに、「すべての世代のための社会をめざして」(towards a society for all ages)というテーマが設定された。それは、ただ単に高齢者だけの人権や高齢社会全般について言及するのではなく、「すべての世代のための社会をめざして」おり、高齢化社会の具体的なあり方が示唆されたものである。
  日本においても、まもなく60歳を迎える団塊の世代が、定年のない地域という場で、プロダクティブ・エイジングを実践することができれば、(1)子どもたちを家族と学校といった囲い込みから開放し、人間関係を拡大する、(2)高齢者を孤独から守り、生きがいを見つけ出すだけでなく、(3)高齢者のこれまで蓄えてきた知恵や英知、経験を社会的に活用し、(4)次世代に文化を継承することができる。さらには、(5)多世代の交流を通じて、地域社会の統合や、(6)地域の抱える様々な社会問題の解決さえすることができるのである。
今年8月2−5日には、日本世代間交流協会、米国ペンシルヴァニア州立大学、信州大学主催で、「世代間交流国際フォーラム」「世代間交流国際研究集会」が早稲田大学国際会議場・井深大記念ホールで開催されるが、ここに多世代が共存・協働するコミュニティ作りを市民レベルでは勿論、学術レベルでも取り上げる第一歩が踏み出されることになる。
皆様の益々のご支援、ご指導、ご参加を心からお願い申し上げます。



ペンシルバニア州立大学 世代間交流プログラム&エイジング 準教授 マット・カプランPH.D.

皆様、世代間交流国際フォーラムへようこそ! 本フォーラムに皆様をお迎えすることができ、心より嬉しく思っております。
もう10年間以上このフォーラムの開催を心待ちにしてきました。私が日本で行なわれていた革新的な世代間交流の実践の「宝庫」に出会ったのは1994年のことです。私は当時、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野にフルブライト研究員として参加しており、高齢者による学校ボランティア活動、学生が近隣の高齢者や複合文化施設、多世代共存を特徴とした世代統合型施設へ訪問するプログラムなど、さまざまなプログラムの視察を通じて素晴らしい体験をしました。以来、日本における世代間交流プログラムは個人や家庭レベルをはじめ、地域や社会レベルでの生活向上を目的として、奥行きと広がりの両側面において目覚ましい発展を遂げてきました。
本フォーラムの目的は、日本国内をはじめ国際的な連携を築くことです。米国の研究事例に見られるように、世代間交流という革新的な取り組みを持続させる最良の方法は、この分野で活動する人々、また活動への参加を望む人々が情報や意見を交換し、励まし合い、認め合う場、また、利益を分ち合う相手や、一緒に働きたいと思える相手と出会える場を作ることです。
そこで、日本世代間交流協会と米国ペンシルバニア州立大学の協力という貴重なパートナーシップにより、本フォーラムが企画・立案されました。世代間交流の研究が30年の歳月を経て発展し続けてきたように、本フォーラムのための支援もまた、雪だるま式に増え続けています。現在、日本には省庁や地方自治体をはじめ、研究機関や学術団体、非営利団体など、20を超える支援団体が共同スポンサーとして登録しています。また、世代間交流に関する発表者として、日本から50名以上、海外6カ国から13名の世代間交流スペシャリストが名を連ねています。スペシャリストの方々は、教育関係者をはじめ、福祉関係者、地域開発者や医療専門家、国家公務員、起業家など、職業も年齢もさまざまであることが特徴です。
一方、本フォーラムのための協賛団体も徐々に増えてまいりました。 国際交流基金日本センターをはじめとする資金提供者リストには、独立行政法人日本学術振興会、独立行政法人日本万国博覧会('70)記念機構、聖徳大学生涯学習研究所、米国諸世代連合(Generations United)、エーザイ株式会社、関西世代間交流研究会、弘文堂、社会福祉法人自立共生会、東京海上日動パートナーズ(町田・つくし野支店)、東芝、国立音楽院、桜美林学園など、多くの団体が名を連ねてくださいました。
この世代間交流国際フォーラムは、必ず、世代間交流の場で既に活躍する皆さまや、これから取組みを始められるみなさんにとって励ましの場になるとともに、世代間交流という手法が私たちの生活に与える影響について学んでいただく貴重な機会となります。
最後に、この国際フォーラムは、世代と世代が互いに支えあい、学習しあうための十分な機会を創出し、「全ての世代を尊び大切にする社会: Society which values all generations」づくりへと一層努力する決意の表明でもあると考えております主催者一同、皆様のご参加を心より歓迎いたします。